とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
アンナ・シモンズを包み込むように抱き締めたままサリエルは泣き続けた。
その様子を右京は眺め、安堵の息をついた。
が、突然暗黒の空から雷鳴が轟いた。
『チッ!!やっぱり来たか!』
『ウッ…ウリエル様!』
『案ずるな。サリエル、彼女を頼むぞ。』
『はい…!!』
右京はサリエルとアンナを庇うように立つと6枚の漆黒の翼を広げて構えた。
空が割れ、稲妻が目の前に落ちた。
その衝撃でフードが外れた。
落雷部分から上がる黒煙を睨む。
ゆらりと動く影が見えた。
『こりゃまた懐かしい顔だな…』
『お久しぶりです…ウリエル様…』
『ラファエルの差し金か?“バラキエル”』
『察しの通りですぁ…』
“神の雷光”の異名をもつ堕天使バラキエル…
堕天使のバラキエルを差し向けたということは恐らく“捨て駒”…
『俺とやるのか?』
『サリエルを痛い目に遭わせて来いって言われてますぁ…』
相変わらず訛っていて聞き取り辛いな…
『いいだろう。俺が相手をしてやる。』
右京の足元に浮かび上がった魔法陣から燃え盛る剣が姿を表した。
『なっ…!?本気ですか、ウリエル様!』
『ラファエルは…人間に限らず俺様も見下しているらしい。』
サングラスを外して大事そうに懐にしまうと右京はバラキエルを睨み付けた。