SIGHT
…冬は嫌いだ。
昔は雪が降る度に馬鹿みたいにはしゃいでいた。
「年をとると何でこうも涙腺が脆くなるのかね…嫌になる。」
2人が不慮の事故で命を奪われたのは雪がちらつくこの季節だ。
逆恨みだってのは解っている。
いくら恨んでみても私には何もできない。
無力。
あざ笑うかのように蔑ますように雪は降る。
駆けつけたときにはもう既に2人は霊安室にいた。
私は…
「風邪ひくぞ。」
「…一人にしてくれ。」
「そうやって悲しんでりゃ浩史さんと和子さんが帰ってくるのかよ?」
ジッポの火打つ音とセブンスターの匂いが鼻を突く。
「俺はお前みたいに脳天気で楽観的じゃないんだよ。」
腹立たしい。
「はっ、クヨクヨした弱虫の考えなんて俺には解んねぇよ。」
「親が死んだ痛みがお前には解んのか!」
「いい加減にしろよ大輔!お前がしっかりしなきゃ誰が若菜ちゃん守んだよ!」
「今を見ろよ大輔!」
十年来の親友はあの日も私と共に病院まで付き添ってくれた、支えてくれた。
あの時もお前は泣いてくれた事を今思い出した。