SIGHT
額に汗が滲む。

帰りまで走る気力はなかった。
それでも普段より歩く速度を速めた。


「百道茂君だね?」


男は胸ポケットから手帳を取り出し、開いてみせる。
警察手帳だった。


酷く腫れぼったい一重なのに男の眼には凄みがある。



「お父さんは、残念だった。その事で今日は来させてもらったんだけど、大丈夫かい?」



優しい声で気遣っているつもりなんだろうが、眼は笑っていない。視線を外したのは私の方だ。



「父は…本当に死んだのですか?」

男の動きが止まる。
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