発明王ショート
「オレさ、体育以外全部成績が悪いんだよ。だからさ、このボイスレコーダーで脅して、成績を上げてもらおうと思ったんだ。

そしたら先生が『AVには出ていませんし、このボイスレコーダーは没収します』って、オレからムリヤリ奪いとろうとした。

もちろんオレも抵抗したんだけど、星野先生の手に、ダイヤの指輪が見えた。だから、これと交換でもいいですよって提案したんだ。

でも星野先生は無言でボイスレコーダーを奪おうとしてきた。お互いに奪い合いみたいな形になって、オレが勝った。ダイヤの指輪を奪ったんだ。

そこに、星野先生が伸ばした手が当たって、指輪が雑草の中に落ちてどこにいったのかわからなくなった。

そのとき予鈴が鳴っちゃって、お互いに教室へ戻らざるを得なくなったわけ。

で、ホームルームに出たら、先生がショートを体育館裏に呼び出した。あ、これは指輪を探させる気だなって気付いた。

だから先回りして、ダイヤの指輪はオレのものだって主張した。以上だ」


 ショートは田井の言葉を、今までの出来事と照らし合わせながら考えた。


「……なるほどね。とにかく、田井が最低の人間だってことはわかったよ」


「わかってるよ、オレだってこんなことしちゃいけないって。でも、オレにだって……」


「……その指輪、ぼくから星野先生に渡しておくよ」


「……わかった」


 ショートは田井からその指輪を受け取って、バッグにしまった。


「成瀬さん、ぼく一回家に帰るから、放課後先生を体育館裏に呼び出しといて。よろしく!」


「え、ちょっと……」


 成瀬の呼びかけも聞かず、ショートは自宅に向かって走り出した。

成瀬はその背中を、呆然と見つめていた。


「わけわかんない……」
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