発明王ショート
◆◆◆


 夕方の空を、薄灰色の分厚い雲が、天高くまで覆い始めていた。

成瀬は上空を見上げ、これからの荒れ模様を予感した。


 体育館裏に、ぜぇぜぇと息を切らしながら、ショートが駆け込んできた。

成瀬はそれを見て、読んでいた本をパタンと閉じた。


「眞森くん、いらっしゃい」


「星野先生は?」


「呼んでないよ」


「そんな! さっきおねがいしたのに!」


「でも大丈夫。今日も体育館裏に呼び出されたから、そろそろくるよ」


 遠くで「そろそろ降ってくるぞ! 一旦道具片付けろ!」と、声が聞こえた。

雲は少しずつ成長し、段々と暗くなり始めていた。


 いよいよ聞こえてきた雷鳴と呼応するように、星野が体育館裏へとやってきた。

星野はショートの姿を捉え、一瞬、顔をしかめて胸元を掴んだ。


「どうして学校を休んだ眞森くんがここにいるのかしら」


「……先生に渡すものがあってきました」


 ショートは田井から受け取った指輪を、かばんから大切そうに取り出し、星野に渡した。


「この指輪、先生のですよね?」


「……体育館裏に落ちていたの?」


「まあそんなとこです。田井に話を聞きました。成績上げろって言われたらしいですね」


「聞いたのはそれだけ?」


「もちろん、AVの話も聞きました。ばかですよね、あいつ」


 ショートは口元を歪めて、かすかに笑った。





「先生が出たのは、AVなんかじゃないのに」





「……そう、気付いたのね」


 成瀬は星野の意外な反応に、疑問を抱いた。


「え、気付いたってどういうこと?」


 ショートは成瀬の疑問に答えることなく、星野に疑問を投げかける。


「先生、ひとつ聞いてもいいですか?」
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