発明王ショート
「そして、『流れ星、つかんでくれ』って、右手を差し出した。私はその手から、彼の指輪を受け取った。それが私の知ってる、彼の最期」


 ぐしゃりと、ショートの膝が、地面に落ちた。

強かった雨が、ショートの気持ちと呼応するように、急激にその雨脚を弱める。


「もしかしたらそうじゃないかって、ずっと思ってた……でも……信じたくなかった……」


 ショートは地面に手をついて嗚咽を漏らす。


ぽたぽたと、緩んだ地面に落下する。


「……先生、最後に父さんが……一言だけ“言いたいこと”があるって」


 それは幻想なのか、それとも現実なのか。

星野の目には確かに見えた。


 ゆらゆらと揺らめいて、形を表す影。

在りし日の、ショートの父の姿。かつて星野が愛した人の姿。


“それ”は満面の笑みで。





『いままでありがとう、幸せだった』





 雨雲は立ち去り、真夏の太陽がギラギラと顔を出した。

体育館裏に差し込んだ光は、一瞬、ショートの父を包み込んで、そして。





 何事もなかったかのように、消えた。
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