発明王ショート
 目をつむった、星野の目から、また一筋。頬を伝って、ぽたりと落ちた。


「星野先生」


 星野が振り向くと、そこには田井がいた。


「田井くん……」


「すいませんでした、これ……」


 田井がボイスレコーダーを星野に渡した。


「オレ、好きな人がいて、でも好きな人と同じ道に進むには学力が足りなくて……」


「わかった」


 星野は泣きながら、精一杯、微笑んだ。


「じゃあ、一緒に勉強しようか」


「はいっ!」


 田井が嬉しそうに、大声で返事をする。

星野はショートに一度目をやって、それから、声をかけることもなく。

田井と一緒に、校舎へと向かって行った。


 成瀬は二人の背中が見えなくなるまで見送って、まだしゃがみ込んでいるショートに視線を移した。


「これで全部、終わったのかな?」


 ショートは腕で、荒く涙を拭った。


「いや、まだ終わってないよ」
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