オフィスの甘い罠
「………ありがとう」



あたしは全く感情の
こもってない声で返して
一気に荷物をまとめると、課長に

『お世話になりました』

と挨拶して再びみんなの
視線を浴びながら部屋を出た。



エレベーターに乗って、
さっき飛び出してきた
副社長室に舞い戻る。



柊弥は今度はデスクに
座った状態でそこにいた。



「お、早かったな。

別につもる話もあるだろう
から、もっとゆっくり
しててよかったのに」



「……ないわよ、んなもん」



吐き捨てながら、重く
なったバッグを近くの
ソファにドサッとおろす。



すると、そのソファの上に
さっきはなかった荷物が
置いてあるのに気づいた。



(……………?)



怪訝な顔であたしがそれを
見てるのに気づいた柊弥が
パッと表情を明るくして、



「あ、それな。

オレからのプレゼントだ」
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