オフィスの甘い罠
「わめくなって。

んなヤボったいメガネ、
いらないだろ。

そもそもダテじゃねーか」



「……………!!」



たしかにそうだ。



だけど、あたしには必要。



薄いメイクもダテメガネも
……あたしが静かに生活
してく為の、必要不可欠な
“殻”。



「………イヤよ。

恥ずかしいなら、とっとと
あたしなんてクビにすれば
いいじゃない」



頑としてはねつけると、
柊弥はあきれ返ったような
特大のため息をついた。



「お前な……いい加減わかれよ。

今さらもう、そんなの
必要ないんだって」



「は? なんでアンタに、
勝手に必要ないだなんて
決められなきゃなんないの?」



アンタにあたしの何が
わかるっていうのよ。



そういう思いを込めて、
まっすぐ柊弥を睨みつけて
やった。
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