オフィスの甘い罠
柊弥はいつもの全く物おじ
しない態度で、正面から
それを受け止める。



そして落ち着いた、あの
尊大なくらい自信に満ちた
声で――…、



「――言っただろ。

お前がつまんねーって
思ってる世界を、オレが
変えてやるって。

だからもう、そんな自分を
偽るアイテムはいらねーんだよ」



「―――――!!!」



ドキリとして、唐突に
呼吸が苦しくなる。


心臓がわし掴みにされた
ような感じだった。



「面白くなるぜ、これから。

オレといたらな」



唇の端を少しだけあげて
笑う、特徴のある笑い方。



―――まただ。

ツキンと、針で刺された
ように胸が痛い。



どうしてだろう?

柊弥のあの笑みを見る度、
あたしはこの不思議な
痛みに襲われる。
< 115 / 288 >

この作品をシェア

pagetop