オフィスの甘い罠
「まぁ、そりゃそうだけど」



「……とっとと使っちまい
たい金なんだよ。

それでお前をキレイに
変身させれるんだったら、
充分すぎるくらいの有効
利用じゃねーか」



「何それ?

あたし別に変身したいだ
なんて一言も言ってないわよ?」



「お前が言わなくても、
オレが決めたんだよ。

前にも言ったろ、ゲーム
みたいなもんだって」



柊弥のその言葉に、
あたしはハッと息を飲んで
言葉につまった。



“ゲーム”――たしかに、
いつか柊弥はあたしに
そんなことを言った。



あれはそう……あたしが
秘書に就任した日の、
副社長室でだ。



どうしてあたしを秘書に
するのか、振り回すの
かって聞いたあたしに――
柊弥はこう答えた。



“自分とあたしの世界を
面白くするための、一石
二鳥のゲームだ”って。
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