オフィスの甘い罠
もう、何度となく重ねた。



吐息も許されないくらい
情熱的で、深くて……体が
くずおれそうになるほどのキス。




――やめてよ。

こんなキスしないで。



このキスもゲームの一部
だっていうなら、こんな
サイアクなゲームってない。



「………やめてっ!」



あたしは体中の力を振り
絞って、必死の思いで
柊弥の厚い胸を突き飛ばした。



柊弥はソファの背もたれに
トンッと背中をついて、
見開いた目でこっちを見てる。



「……なんなの、
ゲームって……」



このゲームの先に
見えるものは、何?



ゲームに巻き込まれた
あたしの先にあるのは、何?



「あたしにアンタの世界
なんて変えられない。

アンタなんて、好きに
ならない……!」



震える声で叫んで、
あたしは立ち上がった。
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