オフィスの甘い罠
黙って消えると決めたの
なら、連絡がつく状態に
しておくほどマヌケな
女じゃない。


電話はするだけムダだろう。



Aphroditeも、もう辞めて
しまっているかもしれない。



(くそっ。

だけど――これで終わりに
なんてしないぜ……!!)



本当はすぐにでも、この
部屋を飛び出して梓を
探しに行きたかった。



でもそれはできない。



自分には今日も、やら
なければいけない仕事が
たくさんある。



梓がフォローしていて
くれたおかげで、初めての
職務でも順調に日々を
過ごしていた。



だけど梓がいなくなった
からと言って、それを放り
出すことなんてできないから。




――心にポッカリと穴が
あいたような隙間を感じ
ながら、柊弥は自分の――
副社長の椅子に座った。
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