オフィスの甘い罠
     ☆☆☆☆☆



午後になると会議やら商談
やらが立て続き、柊弥は
あっという間に仕事に忙殺
されていく。



梓がいないことについては
表向きは家庭の事情で
急きょ休みを取っている、
ということにした。



だが、いつ戻るかもわから
ない状態でさすがに全員に
嘘はつけない。



少し悩んだが、柊弥は
社長である母親と、その
秘書の三浦にだけは本当の
理由を話すことにした。


もちろん、いなくなった
理由まで事細かには言えないが。




ちょうど経営陣揃っての
全体会議の後で少し時間に
余裕があったので、柊弥は
二人を呼び止める。



手短かに、梓が何か思う
ところがあって辞表を
置いて黙っていなく
なったと説明すると、母は
悲しみに顔を歪めて、



「……そうだったの。

どうしてかしら。すごく
優秀で、問題なんて何も
なかったのに」
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