オフィスの甘い罠
「……わからない。

けど、黙って辞めさせる
気はないから。

居所見つけて話をして……
まぁその先は、そん時考える。

それまではオレ一人で
何とかやってくから」



母親を心配させないように
キビキビと話す。



と、次に口を開いたのは
社長秘書の三浦だった。



「……大丈夫ですか?

柊弥クン一人で」



三浦は30代後半の年齢で、
母親が起業した時から
ずっと秘書を務めている男だ。



だから柊弥ともその頃
からの知り合いで、留学前
にも色々相談に乗って
もらったりと、すでに兄の
ような存在になっている。



公私共にいい仲間である
三浦にも心配はかけない
ように、柊弥は明るく
笑って答えた。



「大丈夫だよ。

彼女に色々任せてはいた
けど、自分でだって
ちゃんとやれるから。

だから、代理も後任も必要ない」
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