オフィスの甘い罠
母親はまだ心配そうな
表情は見せているものの、
本人がそう言うなら
仕方ないと考えたのか、



「……わかったわ。

でも無理はしないで。

何かあったらいつでも
相談してね」



そう言い残して、三浦を
促して立ち去った。



とりあえず事情を説明して
納得してもらえたことに
安堵して、柊弥もその場を
離れる。



時刻はもう夕方で、今日は
これ以上の来客や会議は
ないが、まだ副社長室で
目を通すべき資料などが
いくつかある。



もう一息だと自分で自分を
励まして、柊弥は部屋に戻った。



それから数時間、静かな
副社長室で資料や部下
からの申請書類との格闘を
していると――…。



トントントン。



突然鳴り響いたノックに、
柊弥は思わず肩を震わせて
驚いてしまった。
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