オフィスの甘い罠
「………誰だ?」



チラッと時計を見ると、
もう8時を過ぎている。



こんな時間ほとんどの
社員は帰ってるだろうし、
もちろん誰かとの約束も
ないのに……。



一瞬もしやという期待が
胸をよぎったが、ドアを
開けて入って来たのは三浦
だった。



「なんだ、三浦さんか――…」



思わずため息をつきながら
そう声を漏らすと、



「――香川さんだと思ったか?」



三浦は薄い笑みを浮かべて
敬語ではない口調でそう
聞いてきた。



自分が学生の頃から慕って
いて気心の知れている三浦
とは、もうだいぶ前から
お互いタメ口で話している。



ただ柊弥が副社長に就任
してからは、立場上の
けじめとして、三浦は仕事
中だけ敬語を使うのだ。
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