オフィスの甘い罠
その三浦がタメ口で話して
いることで、これがプライ
ベートモードであることを
すぐに理解しながら、
柊弥ははにかむ。



「辞表置いてった日の夜に
ソッコー戻ってくるわけ
ないだろ」



本当は図星だったのだが、
もちろんそんなことは言えない。



だけど三浦にはお見通しの
ようで、彼は意味ありげな
含み笑いをしながら部屋に
入って来ると、



「それでも、戻ってきて
欲しいって思ってるんだろ。

顔に書いてあるぞ」



「………………」



――まったく、三浦さん
にはかなわない。



柊弥は言い訳するだけムダ
だと悟り、ただ軽く肩を
すくめて答えにした。



そしてこんな時間に三浦が
やって来た理由を単刀
直入に確認する。



「どうしたんだよ?

仕事以外で来るなんて珍しい」
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