オフィスの甘い罠
「……もう1年経った頃か。

ふさぎ込むには充分な時間
だったろ。

そろそろ全部忘れたって
かまわないと、僕は思うぜ」



そう言う三浦の声には、
柊弥への思いやりと
気遣いがにじんでいる。



「ふさぎ込んでなんて――…」



言いかけた言葉を、柊弥は
また飲み込んだ。



そんな柊弥の様子を見て
三浦は優しくほほ笑んで、



「とにかく、頑張れ。

何かあれば、僕でよければ
いつでも話を聞くよ」



そう言うと、カチャリと
ノブを回してドアを開ける。



「帰るのか?」



尋ねた柊弥に三浦は笑って
頷いて、



「あぁ。明日も朝は早いからな。

キミも体を壊したら何にも
ならない。

頑張るのもいいけど、
ほどほどにしてさっさと帰れよ」
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