オフィスの甘い罠
気づくとあたしはキッと
顔をあげ、るりちゃんを
睨みつけ――

そして次の瞬間、振り
上げた右手で思い切り
彼女の頬をひっぱたいてた。



響く頬を打つ音と、掌から
伝わる反動。



ぶたれたるりちゃんは、
状況が飲み込めないって
顔で呆然としてる。



でもそれは最初だけで、
震える手を頬に伸ばすと
共に、見る間に怒りの
感情が顔に広がり――…。



「なっ、何すんのよ―――…!!」



つかみかかろうと迫って
くる彼女を、あたしは
さらに右手を振って払った。



「うるさい!

アンタなんかに……

アンタなんかに、あたしの
こと言われたくないっ!!」



「な………!?

生意気言ってんじゃないわよっ。

親にも捨てられた
女のくせにっ!!」



「だからなんだってのよ!?

ロクでもない親ならいない
方がマシよ!

アンタんちみたいな世間体
ばっかのくだらない親もね!!」
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