オフィスの甘い罠


―――え………?




凍りついたように動きを
止めるあたし。



すると無防備になった隙を
逃す事なく、るりちゃんの
平手があたしに襲いかかる。



ヒュッと空を切る音と共に
掌が眼前まで迫り、
ぶたれるのを覚悟した。



だけどその掌は――
あたしの顔に触れる寸前で
止まる。



たくましい腕がしっかりと
るりちゃんの手首をつかんでた。



そして再び耳に届く、
あの懐かしい声――…。



「悪いが、コイツには
手は出させない」



「柊…………!」



「何よっ、アンタ誰っ!?」



あたしの声を遮って、先に
食ってかかったのは
るりちゃんだった。



彼女もすっかり平常心を
失ってて、噛みつかん
ばかりの勢いで自分の手を
つかむ介入者を睨みつける。
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