オフィスの甘い罠
「邪魔しないでよっ!

先に手を出してきたのは
あっちなんだからっ」



血走った目で迫られても、
彼は冷静だった。



るりちゃんの手を降ろすと
自分が間に入るように
立ち、さりげなくあたしを
かばってくれる。



見覚えのあるスーツの、
広い背中と肩。



そしてその肩越しに斜めに
覗く顔は、間違いなく――……。



「柊弥………!!」



ようやくその名前を
呼ぶと、柊弥はチラリと
目線だけであたしを見た。



その顔は、かすかにだけど
ほほ笑んでるように見える。



「よぉ。久しぶり」



短くそれだけを言って、
柊弥は再びるりちゃんに
向き直ると、



「それでも、梓は殴らせない。

わりぃな。オレ、コイツの
顔が気に入ってんだ」



静かだけど迫力のある
声で、キッパリとそう
言い切った。
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