オフィスの甘い罠
     ☆☆☆☆☆



ネオン街を離れて柊弥が
タクシーを停めたのは、
どこかにある大きな
ホテルのラウンジだった。



シラフじゃとても
顔合わせてらんないし……


それに、あたしのドレスが
浮かないようにって配慮
なのかもしれない。



いずれにせよもう反論する
気もないあたしは、柊弥に
背中を押されるままその
店に入った。



カウンターの隅の方の席に
つくと、柊弥が適当に
カクテルをオーダーする。



しばらくして出てきた
琥珀色のカクテルは意外と
甘くて、それが少し
あたしの心を落ち着けてくれた。



自分もカクテルを一口
飲んでから、柊弥は淡々と
した口調で言葉をつむぎ出す。



「……珍しいな。

お前があんな公衆の面前で
感情さらけ出して騒ぐなんて」



「……………」
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