オフィスの甘い罠
以前なら『何言ってんの!?』
って目くじらたてて切り
返してるところだけど、
今夜は正直たいして
ムカつきもしない。



それでも言葉だけは条件
反射のように口をついて――

あたしは話しながら、
同時に他人が言ってる事の
ような感覚でそれを聞いてた。



「辞めろって……簡単に
言わないで。

働かなきゃ、そのうち生活
していけなくなるじゃない……」



すると柊弥はこっちに顔を
向けロコツに眉をひそめて、



「あのな。

だからさっき言ったろ。

あの辞表は受理されて
ねーんだよ。

お前はまだ、うちの社員だ」



「……知らない。

アンタがなんて言ったって
あたしはもう辞めたの。

あたしはもう……アンタの
秘書でも、社員でもない……」



―――ウソだ。



言いながら、もう一人の
あたしが内側から叫んでる。
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