オフィスの甘い罠
ホントはとっくに気づいてる。



柊弥が『迎えに来た』って
言ってくれた時も、今も。



心の奥底では、あたしは
柊弥の言葉を嬉しいって
思ってる。



もちろん待ってたつもり
なんてない。


本当にもう二度と会わない
つもりだったし、会社に
戻るつもりもなかった。



だけど柊弥がまだあたしを
求めて、探してくれて。



そして今、戻って来いって
言ってくれるその言葉に
――あたしの胸は震え、
涙があふれそうなくらいに
喜んでる。




あたしは、嬉しい。




だけど……だけど、
やっぱり……。




「――お願いだから、もう
あたしの前に現れないで。

あたしは……もう、アンタ
とは関わりたくないのよ――」



これ以上あたしを――

あたしの世界を、
変えようとしないで。
< 265 / 288 >

この作品をシェア

pagetop