オフィスの甘い罠
「な、何言って――…」



「――逃げんな。

逃げても、なんにも変わらない」



「逃げてなんか……!」



「逃げてるだろ。

オレからも、自分からも」



「っ…………!」



ノドの奥に何かがつかえた
ように、それ以上の言葉は
言えなかった。



……ううん、違う。



それ以上言い張ることが
できなかったんだ。

『逃げてない』って言葉を。



黙り込んだあたしに、
柊弥は小さくひとつ
ため息をついて……さとす
ようにゆっくりと、一言
一言を区切って言った。



「お前がなんでそんななのか――

さっきのやり取り聞いて
たら、なんとなくわかった
気がした。

それで確信したよ。

お前は怯えて、逃げてるって」
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