オフィスの甘い罠
連絡先も、どこに行ったの
かもわからない。



もう二度と会えない。



――母親は、あたしを
捨てたんだ。



「それから2年だけは、
祖父母と生活した。

だけど二人共病気がちで、
すぐにあたしを養うのは
大変になって。


祖父母が施設に入ることに
なった時に、別の親戚に
預けられたの。

それが……さっきの、
あの女の子の家。
あの子はあたしのいとこよ」



あの家での生活は嫌なこと
ばかりだった。



だらしない性格のあたしの
母は昔から嫌われてた
みたいで、あたしも嫌々
面倒見させられることに
なったお荷物でしかない。



すでに可愛い娘のいるあの
家で、あたしに向けられる
愛情や思いやりなんて
ものがあるわけもなく……。



あたしはなんの主張も
要望もせず、ただそこに
住ませてもらうためだけに
おとなしくすることを
身につけた。
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