オフィスの甘い罠
言い切ったあたしを、
柊弥は思いつめた目で
ジッと見てた。



張り詰めた空気が二人の
間を支配する。



やがてその空気を破って
柊弥が発したのは――

不思議な自信に満ちた、
凛とした声だった。



「……変えられる。

生き方も、世界も。

それに―――お前自身も」



「柊……弥……?」



(ウソだよ。

どうしてそんなことがわかんの?

世界とか……それに
あたし自身なんて、当の
あたしがムリだって
言ってんじゃない――)



心の中ではそんな反論が
渦巻いてる。



だけどあたしは、その声と
強い光をたたえた瞳に
吸い込まれるように、ただ
言葉も忘れて彼を見つめてた。



そんなあたしに柊弥が
投げかけた次の言葉は。



それは――あたしの体を
貫き通すほど強い力を
持った、あの言葉。
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