コスモス


……………

日が随分傾いた。

端まで回りきった僕等は、昼の待ち合わせ場所の階段の下で、最後に買った調理部のクッキーを2人で食べていた。

この辺りは店がないからか、人通りが少ない。
遠くで生徒の笑い声と、アナウンスが聞こえた。


「…凄い楽しかったね」

明日可がそっと呟く。
その横顔には、夕日が綺麗に映っていた。

「…うん。楽しかった」

幸せな、瞬間。


「…ね、シュウ。目つむって」

前を向いたまま、明日可が呟いた。

「え?」
「いいから!」

夕日で少しわかりにくいが、確実に明日可の頬は赤く染まっていた。

…キス、する気かな?

「わかったよ」

ふっと笑った僕は、ゆっくりと目をつむった。

目の裏に、夕日が染み込む。



…しばらくたって明日可を感じたのは、唇ではなく耳だった。

透き通った歌声。

小さい頃、毎年歌ってもらっていた懐かしい歌。



…バースデーソングだ。


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