コスモス
……………
…雨の香り。
…水色の傘。
…君の、横顔。
…コツンッという衝撃を頭に受け、僕は振り返る。
みんなも持っている筒をかかげたカズが、そこにはいた。
胸の花が、妙に似合う。
「…ってぇな…」
「何してんの?…あ、また見てたのかよ」
のぞき込んできたカズを避けるように、僕は手に持っていた紙を後ろに隠した。
「いいだろ、別に」
「まぁいいけどさ。…瀬堂、元気?」
なんてことない問いだけど、僕たちの中では重要な問いだった。
「ああ。たまに英語で手紙書いてくんだよ。あいつは得意でも、俺は苦手なんだっつの」
げた箱から見える青空を見ながら、僕は言う。
「んなこと言って、嬉しいくせにさ。毎日手紙眺めてるくらいだもんな~」
「うっせーよっ!」
軽く殴る僕に、ははっと笑うカズ。
こんなやりとりも、もう今日で最後だ。
…今日は僕たちの、卒業式だった。