コスモス


……………

僕たちは、駅近の喫茶店に入った。

学生の多い、学校近くのファーストフードは避けた。
きっと、聞かれたくない話だろうと思ったから。


「…話って?」

運ばれてきたコーヒーを口元に運びながら、僕は聞いた。
慣れない苦い味が口の中に広がる。

聞かなくても、わかっていたけれど。


「…明日可ね…」


一瞬、体が強張る。
予想していた名前なのに、僕の心臓が徐々に速まった。

平然を装い、一口飲んだコーヒーを机に戻そうとする。


「明日可、入院してたの」


…手元が狂った。

店の隅に響く陶器の音。
机にコーヒーが跳ねる。
それは、小さなシミとなった。

入院?


電流が背中を駆け巡った。


「…それって、…風邪が悪化して…」
「違うの」

ミキが僕の言葉を遮る。

「違うの…」

小さな白い手の甲に浮かぶ青い筋。
カフェオレのカップを握るミキの手に、力が入るのがわかる。


「明日可…心臓の病気なの」



…ミキの言葉を理解するのに、時間がかかった。


ビョウキ?



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