コスモス
「…覚えてる?キャンプの日、ミキが鬼ごっこじゃなくて、かくれんぼにしようって言ったこと…」
「…ああ…」
絞り出すような、声。
余りにも出ていない自分の声に、内心驚きを隠せない。
「あれ、違うの。明日可、ほんとは運動得意なの。中1の頃は、陸上部の期待のルーキーだったくらい、足だって速いの」
カフェオレを見つめたままミキは話す。
店に入って、まだミキは一口も口をつけていない。
「でも…中2の時に、病気が見つかって…。走れないの。苦手とかじゃなくて…、できないんだよ…」
ミキの言葉を、回らない頭で1つ1つ理解していく。
あの日覚えた違和感の理由が、ようやくわかった気がした。
…明日可は僕に、嘘をついていたんだ。
固まった口がようやく動く。
「なんで…」
無意識に拳に力が入った。
「なんでそんな大事なこと黙ってたんだよっ!?なんでもっと早く…」
「明日可はっ!」
ミキが顔を上げた。
その目は、涙でいっぱいだった。
「明日可は…怖いんだよ」