コスモス
目に涙をためたまま、ミキは話続ける。
「明日可は、病気のせいで色々犠牲にしなくちゃいけなかった。恋だって…凄く、傷ついてきた…。明日可、『シュウには言わないで』って言ったの。怖いんだよ。須川君に嫌われるんじゃないかって…怖いんだよ…」
僕は、目線を下げた。
カップを握ったミキの手に、大粒の滴が落ちる。
「お願い…わかってあげて。明日可、ただ臆病になってるだけなんだよ。明日可の本心は、須川君が好きってことだけなんだよ」
ミキの小さな肩が震える。
「お願い…」
…どうやって家に帰ったのか、いまいちよく覚えてなかった。
ベッドに体を放り投げたまま、何時間もそうしている。
頭にあるのは、ミキの話と涙だけ。
『心臓の病気』
…明日可が?
嘘だろ?
否定する僕の中で、肯定するための要素が次々と浮かぶ。
去年殆ど学校に来てない理由。
家族が学校によく迎えに来る理由。
泊まりを妙に意識した理由。
あの日、明日可が僕の目を見なかった理由。
まるでパズルが埋まるように、すべてが1つに繋がる。
ミキの話を、認めるしかないのか。
…まとまらない頭のまま、朝日が僕の部屋をさした。