コスモス
「…そんな大事なポーチ忘れるなんて、バカだよね。とにかく、それを見られたくなくて、自分で取りに行った」
淡々と話す明日可。僕は何を言えばいいのかわからなかった。
再び沈黙に襲われる。
どこかのクラスの先生の声が、微かに耳に響いた。
「…こんな子、やでしょ?」
明日可が、呟いた。
ふいに、ミキの言葉を思い出す。
『怖いだけなの』
「俺はっ…」
「今までありがと」
突然の言葉に、僕は驚く間もなかった。
「結構な暇つぶしになったよ。学校行ける間は、彼氏とかいたら楽しいかなーって思ってたからさ、とりあえずシュウに声かけたの。でも、ばれちゃったらしょうがないっしょ」
明日可は立ち上がり、非常階段を降りた。
目線が、丁度同じ高さになる。
明日可の目を見つめることを、初めて苦痛に思った。
「あたしの病気知ってる人と付き合っても、何も楽しくないもんね」
明日可は笑顔で僕に告げる。
…意味が、わからない。