コスモス
「てことでさ、シュウも別の人探しなよ。あたしもそうするし」
「…何言ってんの?」
「え?だから…」
「俺は明日可がっ…」
「好きだとでも言いたいの?」
冷たい明日可の声が、僕を刺した。
今までに聞いたことのない声だった。
ため息をつく明日可。
目の前がぐるぐると回る。
「…言ったでしょ?暇つぶしだって。あたしは別に、誰でもよかったの。シュウじゃなくたって、誰でも」
頭をガツンと殴られたような衝撃だった。
痛みを痛みと捉えられない、衝撃。
「あの日、たまたま玄関にいたのが、シュウだったってだけ。あれがカズ君だったら、カズ君と付き合ってたかもね」
目の前にいるのは明日可なのに、話しているのは明日可なのに、僕は彼女が誰だかわからなくなった。
目の前がすっと暗くなる。
貼り付いた声を無理やり絞り出した。
「…それがお前の本心なわけ?」
「…だからそう言ってるじゃん」
ふらりと、僕は立ち上がる。立ち眩みがしそうだ。
ゆっくりと階段を降りる。
「…わかった」
明日可の隣を通り抜けながら、僕は呟いた。
明日可を残したまま、非常階段を立ち去る。
チャイムが聞こえた。
何を告げるチャイムなのか、僕には理解ができなかった。