月待ち人
気だるい体を無理に起こしてカーテンを開くと彼女の部屋が見えた。
水色のカーテンが開かれるのを待ちわびているように風に揺られていた。
「ツキ…おはよ。オレちゃんと起きられるんだからな」
下へ降りるといつも通りの風景で安心した。
「おはよ、鳴瀬」
母さんは焼き魚を作っていて父さんは緑茶片手に新聞を読んでいる。
「父さん、今日はゆっくりだね」
「そうか…お前がいつもゆっくり過ぎなんだろう」
いつも厳格な父さんも何故か穏やかだった。オレに気を使っているのかもしれない
「父さん…オレ平気だよ」
そうに言うと父は照れ隠しに咳払いをして冷め切ったお茶を喉へと流しこんだ。
3人で囲むいつもと変わらない朝の一時、父さんは上着片手に玄関へ向かう。その後を見送りに出る母さんが追う。オレはその光景をボーッと眺めていた。
「ほら、鳴瀬も早くなさい。遅刻するわよ」
玄関から叫ぶ母さんの小言に適当に返事を返して立ち上がる。
「いってらっしゃい」
「いってきます、帰り遅くなる」
「桜月ちゃんの所…刺激して困らせないでね」
母さんの言葉に頷いてオレはそのまま扉をしめた。
桜の花はキラキラと輝いて泣きたくなるくらいにキレイだった。
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