月待ち人
約一週間は入院が必要になったツキとおばさんを残してオレ達は病院を後にした。
「悪かったね、鳴瀬くん…辛い思いさせて」
駐車場でツキの父親から頭をさげられた。
「ツキが大丈夫なら…オレ、平気です」
大丈夫なんかじゃないけど強がってみる
別れの挨拶をして後部座席へ乗り込んだ
車の中はしばし沈黙が続き
ワザとらしくつけたラジオから流れる交通情報が更に虚しさを強くしていた。
オレの横にいた姉さんが助手席にいた母さんに向って声をかけた。
「ママ…桜月ちゃん鳴瀬の事思い出さないままなの」
母さんは返事に困ったようにお茶をにごした答えで笑った。
「んー…、そうねぇ」
「それよりも鈴瀬、今度…宙音ちゃんつれてきなさい」
話をはぐらかした母さんにそれ以上誰も口を出す事はしなかった。
「ママ…ソラ甘やかしすぎるんだもん」
宙音は姉さんの子供、母さんは孫を甘やかす事に生き甲斐を感じているのだ。
途中で姉さんを下ろして自宅へ車を走らせる。誰も何もしゃべらない…
みんな目を合わせる事なく車は夜道を走っていった。
病院で医者が言ってた言葉…
想いが強すぎた反動でオレの記憶だけがぬけ落ちたらしい。
そんなのちっとも…嬉しくねーよ
明日になったら…ツキから電話が来て、
「冗談でした、引っかかった。」
なんて笑われて…。
そんな事ある訳無いのに…
オレの心はツキで満ち溢れてるのに、
ツキの心は誰で満ち溢れてるの?
「ツキ…好きだよ。大好きだよ」
空に零した言の葉は刹那のごとくに消えてしまった。
朝…やかましい騒音は聞こえない。
ツキ…オレ、起きないよ。起こしてよツキ…
「悪かったね、鳴瀬くん…辛い思いさせて」
駐車場でツキの父親から頭をさげられた。
「ツキが大丈夫なら…オレ、平気です」
大丈夫なんかじゃないけど強がってみる
別れの挨拶をして後部座席へ乗り込んだ
車の中はしばし沈黙が続き
ワザとらしくつけたラジオから流れる交通情報が更に虚しさを強くしていた。
オレの横にいた姉さんが助手席にいた母さんに向って声をかけた。
「ママ…桜月ちゃん鳴瀬の事思い出さないままなの」
母さんは返事に困ったようにお茶をにごした答えで笑った。
「んー…、そうねぇ」
「それよりも鈴瀬、今度…宙音ちゃんつれてきなさい」
話をはぐらかした母さんにそれ以上誰も口を出す事はしなかった。
「ママ…ソラ甘やかしすぎるんだもん」
宙音は姉さんの子供、母さんは孫を甘やかす事に生き甲斐を感じているのだ。
途中で姉さんを下ろして自宅へ車を走らせる。誰も何もしゃべらない…
みんな目を合わせる事なく車は夜道を走っていった。
病院で医者が言ってた言葉…
想いが強すぎた反動でオレの記憶だけがぬけ落ちたらしい。
そんなのちっとも…嬉しくねーよ
明日になったら…ツキから電話が来て、
「冗談でした、引っかかった。」
なんて笑われて…。
そんな事ある訳無いのに…
オレの心はツキで満ち溢れてるのに、
ツキの心は誰で満ち溢れてるの?
「ツキ…好きだよ。大好きだよ」
空に零した言の葉は刹那のごとくに消えてしまった。
朝…やかましい騒音は聞こえない。
ツキ…オレ、起きないよ。起こしてよツキ…