らっく!!


「ホントになんでもないですから…!!」


私はバッと先輩の手を振り払った。


掴まれていた手首をさする。


そこにだけが熱が集中していたかのように熱かった。


「俺に嘘つくの?」


先輩は微かな怒りを滲ませ、私を射抜いた。


私だけが責められているように感じた。


「どっちが嘘つきですか!?先輩だって嘘ついてたじゃないですか!?」


「嘘はついてない。言わなかっただけ」


ずるい…。


ずるいよ…っ…。


「紘一さんには私から言っときますから…。今までありがとうございました」


これ以上はつらい…。


追いかけてきて欲しくなんてなかった。


先輩が優しいことを改めて実感させられるから。


「美弦ちゃん…怒ってるじゃん」


「怒ってないです」


「じゃあ何で泣くの?」


先輩の手が私の頬に触れる。


いつの間にか私の目からは止まったはずの涙が溢れていた。


「先輩は優しいから断れなかったんでしょ?私…嬉しかったのに…先輩が一緒に食べよって言ってくれて嬉しかった。でも本心じゃないんでしょ…?」


ホントは私なんかと一緒にいるの嫌だったんだよね?


「美弦ちゃん?」


「もう大丈夫ですから…。これ以上優しくしないでください…。さよなら…」


私は先輩の顔を見ずにその場を走り去った。


先輩はもう追ってはこなかった―…。


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