押しかけ×執事
仕事中に突然倒れたお母さん。
それは3学期に入って間もなかった頃で、授業を受けるために学校にいたあたしは、話を聞いてパニックになりながらも、早退し、教室を飛び出した。
慌てて着込んだコートにカバン、その下には制服……まとわりつく長い髪を気にすることもなく振り乱し、1月の冷たい空気が肌を突き刺しても、あたしは必死に走って教えられたお母さんの運ばれた総合病院に駆け込み、病室へと向かったのを覚えている。
無事かどうかを早く確認したい――その一心で。
「お母さんっ!」
「あらぁ、さつき。どうしたの? そんなに血相変えて」
勢いよく病室に入ったあたしに、お母さんのいつもの明るい声が聞こえた瞬間……肩で息をしながらも、気が抜けて座り込んだっけ。
「お母さんが……倒れちゃったって聞いたから……」
やっとの思いでそう呟いて、よろよろとベッドに向かうあたしの姿を見たお母さんは、
「やーねぇ、ちょっとめまいがしただけよ。すぐによくなるわ」
ころころ、と口元に手を当てて笑った。
「そうなんだ……」
その顔を見て、あたしはすごく安心したっけ。
いつもの変わりないお母さんだ――って。
――お母さんの体内を蝕む病魔を知らずに。
それは3学期に入って間もなかった頃で、授業を受けるために学校にいたあたしは、話を聞いてパニックになりながらも、早退し、教室を飛び出した。
慌てて着込んだコートにカバン、その下には制服……まとわりつく長い髪を気にすることもなく振り乱し、1月の冷たい空気が肌を突き刺しても、あたしは必死に走って教えられたお母さんの運ばれた総合病院に駆け込み、病室へと向かったのを覚えている。
無事かどうかを早く確認したい――その一心で。
「お母さんっ!」
「あらぁ、さつき。どうしたの? そんなに血相変えて」
勢いよく病室に入ったあたしに、お母さんのいつもの明るい声が聞こえた瞬間……肩で息をしながらも、気が抜けて座り込んだっけ。
「お母さんが……倒れちゃったって聞いたから……」
やっとの思いでそう呟いて、よろよろとベッドに向かうあたしの姿を見たお母さんは、
「やーねぇ、ちょっとめまいがしただけよ。すぐによくなるわ」
ころころ、と口元に手を当てて笑った。
「そうなんだ……」
その顔を見て、あたしはすごく安心したっけ。
いつもの変わりないお母さんだ――って。
――お母さんの体内を蝕む病魔を知らずに。