ガラクタのセレナーデ
 いろははそっと歩み寄り、真と向かい合うようにしてしゃがんだ。

「真くん、ごめん。明日は先生と一緒にご飯食べよ」
 そう言ってやると、真はゆっくりと顔を上げる。

「ほんと?」
「うん、ほんと」
 いろはが微笑むと、また真もつられるように笑顔を見せた。

「チロと遊んでいたの?」
 愛想よく尾を振るチロを振り返りながら、いろはが問うと、
「見てただけ」
 真は素っ気無く答えた。

「チロは、食いしん坊なんだ。なんでも噛まずに飲み込んじゃう。悪い子だよね?」
「そうかな? 先生は、食欲旺盛な元気な子だと思うよ」
 そう言っていろはは可笑しそうに笑った。

「それに……若葉園に、悪い子なんていない」
「ふうん」
 真はどうでもよさそうに相槌をうつ。


「あ……」
 いろはは立膝になり、真の頭の上にちょこんとのった、小さな桃色を手に取った。



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