ガラクタのセレナーデ
 いろはは照れくさそうに笑い、だがもう後には引けず、さらに無駄情報を口にする。
「先生って、女っぽくないでしょ? だから、モテないんだ。真くんはモテモテだもんね。羨ましいな……」

「ボクが、モテモテ?」
 不思議そうに、いろはを見詰めて聞いた。

「だって、かっちゃんと裕子さん、真くんのこと大好きじゃない」



「ボクは……
 菊島センセーの『大好き』が欲しい」



 真がさらりとそんなことを言い、いろはは思わず赤面する。

「先生も、真くんのこと大好きだよ。かっちゃんも、裕子さんも、みーんな大好き」


「『みーんな』……」
 真は、伏し目がちに、いろはの言葉を繰り返した。

 その愁いを帯びた真の表情に、いろはの胸がチクリと痛んだ。







< 12 / 56 >

この作品をシェア

pagetop