ガラクタのセレナーデ
 由羅はその3ヵ月後に行方不明となり、そして、変わり果てた姿で見つかった。

 港で釣りをしていた男が、海に沈んでいた由羅を釣り上げたのだ。
 それは、由羅の勤め先から、捜索願が出された二日後のことだった。

 誤って海に転落しての溺死。

 その知らせを聞いた時、いろはは胸を引き裂かれるような、痛烈な悲しみに襲われた。

 それはいろはの心に深い傷を残し、五年経った今でも、時に疼いていろはを苦しめるのだ。


 その後も数人が、由羅のようにここを卒業し、誰にも連絡先を知らされないまま、何処かへ就職していった。




「菊島ー! 昼飯にお好み焼きはどうだ?」

 不意に大声で呼ばれ、いろははビクンと身体を震わす。
 声のした方を見ると、二軒先のお好み屋から、箕浦が身を乗り出してこちらを見ていた。

 隣を振り返ると、真の視線は未だガラスの兎に注がれたままだった。

「真くん、お腹空かない?」
 いろはが言うと、ようやく真はゆっくりといろはに視線を寄越した。



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