ガラクタのセレナーデ
「そうか、わかった。
 で、聞きたいことって?」
 ようやく箕浦は、譲歩したかのような言葉を口にする。
 だがその表情は、未だいろはへの疑いが消え去らぬままで、箕浦が納得していないのは明らかだった。

「かっちゃんのことです。
 かっちゃんの就職先、やっぱり……教えてもらえませんよね!?」
 これ以上箕浦を怒らせまいと思うも、どうしても聞かずにはいられなかった。

「またそれか。
 だから何度も言ってるだろ? 彼女たちが新しい生活に慣れるためには……」
「本当に、皆、今もどこかで元気にやっているんですか?」
 いろはは思わず、腹立ちを隠し切れず、責めるように言った。

 野々山美奈子が殺されたと、有坂という刑事に聞いた。
 そしていろはは、美奈子の遺体の写真も、この目で見ている。

 だがその事は、箕浦には伝えなかった。
 伝えてはいけない、ただ漠然とそんな風に思った。

「菊島、お前……」
 そう何か言いかけ、だが、箕浦は思い直したように口をつぐむ。

「とにかく、何も教えられない。
 聞きたい事はそれだけか?」
 箕浦は吐き捨てるように言い、いろはに出て行けとばかりに、ドアを全開まで押し開け、自分は端に身を寄せた。

「はい」
 と目を伏せ、いろはは箕浦の部屋を後にした。


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