ガラクタのセレナーデ
その日、書類の整理をしておけと、職員の中でいろはだけが箕浦に仕事を押し付けられ、ただ一人施設に残ることになった。
全ての仕事を終えた頃には、すでに午後10時を回っていた。
昼間の報復であるのは明らかだが、それにしても酷すぎると、いろはは時計を見やり唇を噛む。
人通りの少なくなった帰り道を、疲れた身体を引きずるようにして、トボトボと俯いて歩いた。
信号待ちをしている時、不意に肩に下げていた鞄の中の携帯が鳴った。
慌てて鞄から抜き出すと、画面には見知らぬ番号が表示されている。
不審に思うも、いろはは意を決して電話にでた。
「もしもし?」
「あんた、つけられてる。
助かりたかったら、言うとおりにしろ」
無機質な低い声がそう言った。
「あなた、誰?」
「うるせぇよ。黙って聞け。
いいか、このまま電話で話し込んでる振りを続け、信号が赤になる直前に、全力で走って渡れ。
今日は自宅には帰るな。
わかったな」
「ちょっと待っ……」
だが電話はプツリと切れた。