ガラクタのセレナーデ
 いろははそれ以上何も聞かず、諦めたように男から視線を外した。

 もう一度、部屋中を眺めてみた。
 だが、見覚えのあるものが視界に入り、思わず凝視する。

 それは、コーナーボードの上に、一つだけポツンと置かれていた。
 『青空フェスティバル』の出店で、真が飽くことなく眺めていたガラスの兎。
 そして、いろはがこっそり真にプレゼントしたものだ。

 男がそれに気付き、いろはの目線を辿ると、弾かれたように立ち上がり、素早くそれを手に取った。

「あなた、やっぱり真くんなの?」
 男は、黙ったまま答えない。
 ただ、いろはを冷ややかに見詰め返す。

 やがて、
「だったら……何?」
 開き直ったのか、あっさり認めた。

「でも、あれが演技だとしたら、あまりにもリアル……」
 自分で、男が真ではないかと疑っておきながら、いろははそんな事を言う。

「一ヶ月間、本物の『夏目真』と暮らした。
 そうして、真の言動、思考を全て俺の中にインップットした。

 なんなら本物の真、紹介してやるよ。
 あんた、ああいうのが好みだろ?」
 言って、男は意地悪く微笑んだ。



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