ガラクタのセレナーデ
 何故こうも、この男がいろはに対して挑発的なのかはわからない。
 だが、男のそんな態度が、いろはには悲しく映る。
 男が泣いているように映る。


「大切にしてくれてたんだ」
 いろははそう言って微笑んだ。

 そんないろはの態度に、意表をつかれたように目を見開く。

 が、すぐさま男は窓際へ移動し、乱暴に窓を開けると、ガラスの兎を握った手を窓の外へと突き出した。

「捨てるの忘れてた。こんなもん……

 いらねぇ」

 そう言い終えると、男は窓の外の、握っていた手を勢い良く開いた。
 手の中にあったそれは、チラリと微かに瞬いて、男の手からこぼれ落ちた。

 ガラスが砕け散る音と同時に、
「カシャーン」
 と効果音を口から発しながら、男は笑みを浮かべた。

 いろはは反射的にベッドから降り立って移動し、窓から身を乗り出して見下ろした。
 アスファルトの上に散らばった兎の欠片を目にし、そして、すぐ隣に立っている男を再び見た。


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