ガラクタのセレナーデ
 咄嗟にいろはは、身を翻して駆け出した。

「おい!」 
 男の叫ぶような呼びかけも無視して、部屋を飛び出した。



 建物の外、歩道に散在するガラスの破片の元にしゃがみ込んで、いろははそれを一つ一つ拾い始めた。
 ほどなくして、男もアパートから歩道へと飛び出し、いろはの姿をみとめ、立ち止まる。

「何してんだ? 怪我するぞ」
 言いながらいろはに駆け寄り、その片腕を掴んで引き上げ、いろはを力ずくで立たせた。

「そんなもん、拾ってどうする?」
 いろはの腕をグイグイ引っ張り、部屋へ連れ戻そうとする。

「放して!」
 そう叫び、掴まれた腕を振りほどこうといろはが暴れるので、男は舌打ちし、
「うるせぇよ、何時だと思ってやがる」
 言って、男はいろはの身体をひょいと抱き上げ、左肩に担ぐと再び歩き出した。



 部屋に戻ると、男はいろはを乱暴にベッドに落とした。
 すぐさま横たわった身体を起こし、いろははベッドの上に正座をする。

 男はベッド横に膝をつき、
「手ぇ見せろ」
 と言って、自分の両手のひらを差し出した。



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