ガラクタのセレナーデ
 いろははふて腐れながらも、言われるまま両手を差し出した。
 その指先を掴んで引き寄せ、いろはの手が切れていないのを確認すると、すぐさま男はいろはの両手を解放した。

「あんた、一体何がしたいんだよ?
 バカじゃねぇの?」
 呆れたように男が言う。

「あの兎が、あなたに見えて……」
 いろはは震える声で小さく答えた。

「は? 俺が『ガラクタ』だって言いたいの?
 ちょっとそれ、酷すぎじゃないですかぁ? センセー」
 そうおどけて言い、男は可笑しそうに笑った。

「壊れたまま、放っておけなかった」
 男を悲しげに見詰め、いろはは言った。

 その瞬間、男の笑顔は凍りついたように強張り、

「ふざけんな、てめぇ……
 犯すぞ」

 いろはを睨み付けて低く唸った。

 だがいろはは、怯えることなく切なげに瞳を揺らす。

 そして……


 

< 36 / 56 >

この作品をシェア

pagetop