ガラクタのセレナーデ
 やがて……
 男は覚悟を決めたように話し始めた。

「今日ここで、ガサ入れがある。
 礼状が出たんだ。
 箕浦は、あんたに秘密を知られたと思い込んでる。
 どんな凶行に出るか、俺らも予想がつかねぇ」

 唐突にそんな事を告げられても、いろはには何の事やらさっぱりわからない。
 箕浦とは先程、何事も無く朝の挨拶を交わしたばかりだ。
 昨日に引き続き箕浦は、いろはに対して嫌悪感剥き出しではあったのだが。

 必死で頭の中を整理しようと尽力していると、
 男は切なげに、いろはの頬を両手で包み込んだ。

「なぁ、頼むよ……
 逃げてくれ。
 全てが終わるまで、
 どこでもいい、とにかく、ここから離れたところに居てくれ」

 泣きそうな顔で懇願する男に、いろはの心は揺れた。

 いろはの頬を覆う男の手に、そっと上から自分の手を重ね、
「あなたが
 私を守って」
 揺れる瞳で見詰め返す。

「俺には目的がある。
 あんたを守ってやれない」
 そう言って、男は目を伏せた。




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