ガラクタのセレナーデ
「ああ、真か。
 先生、チロに餌やるの忘れててな」
 取り繕ったような笑顔を浮かべて箕浦は言った。
 
「ふうん」
 どうでも良さそうに、真は相槌をうつ。

 箕浦は安心したように、一息つくと、持っていたミニロールパンを、チロの口元へと持っていった。
 途端、常日頃おっとりしている真からは、まるで想像もつかないような素早い動きで、真が箕浦に駆け寄った。

「ダメだよ、センセー、そんな大きなパン、チロにあげたら」
 箕浦のパンを持つ右手首を掴んで、真が言った。
 そうして、そのままキリキリと捻りあげる。

 男の箕浦でも抵抗できないほどの真の腕力に驚き、そして掴まれた手首の酷い痛みに、箕浦の顔が歪んだ。

 そんな箕浦を見下ろして、真は冷ややかに微笑み、そして続けた。
「チロは、何でも噛まずに飲み込んじゃうんだ。
 大きいままあげたらダメだ」

 真の言動に、不吉な違和感を抱いた箕浦は、目を見開いて真を見上げた。
 その顔には、恐怖と不安が混在していた。

「お前……一体誰なんだ?」
「『夏目真』だけど!? センセー忘れちゃったの?」
 真は、不適に微笑んだ。



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